宮花物語
それを聞いた信志は口を閉じ、じっと床を見つめた。

「黄杏はきっと、自分は何しに来たのだと、自分で自分を責めているでしょう。だからこそ、自分付きである黒音が王のお子を孕んでくれればと、身を切る思いで申し出てくれたのです。」

「そんな必要はない!」

信志は、自分の太ももを叩くと、立ち上がった。

「黄杏は、こうも申しておりました!」

一旦、立ち止まる信志。

「黒音は、王をお慕いしているので、よく仕えてくれるかもと。」

白蓮は、立ち止まった信志の前に、やってきた。

「心通わぬ相手と子を作るのは、お互いに苦しいだけでございましょう。ですが、どちらかに気持ちがあれば、もう一方も救われます。黄杏はそこまで、王を思うてらっしゃるのですよ。」

信志は、手を強く握った。

「子ができぬかもしれぬとなれば、直ぐに他の女か。」

「恐れながら王は既に、お若くはありません。この国の為にも、早くお子を作らなければ。」
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