宮花物語
それはお互いを思いやる兄妹にとっては、耐え難い仕打ちだった。

妹は、好きな男と引き離されてしまう。

兄は、明日にも命を奪われてしまう。


「お待ちください、白蓮様!」

黄杏は、白蓮の裾を掴んだ。

「この者は何も悪くはありません。私が、櫛を買い求めようとして、出店に参ったのが、悪いのです。」

「妃自らが、出店に!?」

「はい。あまりにも良い品ばかりで、決められず。しかも諦められずに、夜中皆に内緒で櫛を売ってくれないかと、お妃である誇りも忘れ、将拓殿にお頼みしたのが悪かったのです。」

「この、阿呆者!」

「申し訳ありません!仰る通り、私は阿呆です!このまま王に離縁を言い渡されても構いません!ですから、この者の命だけは、お助け下さい!お願い申し上げます!」

服の裾にしがみつき、涙を流しながら命乞いを、必死にするなんて。

ここ数日、会ったばかりの出店の商人相手に!

白蓮は、何かが胸に引っ掛った。
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