宮花物語
第11章 命の見返り
昼過ぎ、公務で宮中を出ていた信寧王が、帰還した。

出迎えた妃達の中に、黄杏の姿はない。

「黄杏はどうした?」

帰ってきたばかりで、直ぐに黄杏の名前を挙げる王に、他の妃は黙ったままだ。

「白蓮?そなた、何か聞いておらぬのか?」

声を掛けられた白蓮は、静かに信志の側に寄った。

「その事で、王にご相談がございます。後で、私と一緒に来て頂けますか?」

信志は、穏やかではない白蓮の表情に、胸騒ぎを覚えた。

「……めでたい話でも、なさそうだな。」

「はい。」

返事をした白蓮は、初めてかもしれない程に、申し訳なさそうな顔をしていた。


妃達の出迎えが終わり、着替えをしている信志は、白蓮の申し訳なさそうな顔が、頭から離れなかった。

黄杏の事で、白蓮があんな顔をするなんて。

黄杏に何かあったのではないか。


ふと、公務で外に出る時に、黄杏が『兄と会う』と言っていた事を思い出した。
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