宮花物語
まさか、誰かに見られた?

見られて、それが白蓮の耳に入った?

信志の額に、汗が滲んだ。


あの二人の事だから、兄妹だと言う事は、うまくごまかせているだろう。

だが問題は、将拓を黄杏の不義密通の相手だと、疑っているのでは?と言う事だ。

そうなれば、何の審議も無しに、あの二人を開放する事はできない。

どうすればいいのか。


「誰か、忠仁を呼んでくれ。」

信志は振り返った先に、白蓮が立っているのを見て、驚いた。

「忠仁が如何されたのですか?」

「あ、ああ……相談事があってな。」

だが白蓮は、何か言いたげに、ジッと信志を見ている。

「……お急ぎの件ですか?」

「そうだ。」

それでもまだ、信志から目を離さない白蓮。


疑う余地もない。

白蓮は、知っているのではないか。

黄杏と将拓の関係を!!


「白蓮?」

「はい。」

狼狽える事もなく、騒ぐでもなく、ただ静かにこちらの出方を伺っているようだ。
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