宮花物語
「寛大な処置を頂き、有難うございます。」

黄杏も将拓も、涙を流しながら、お礼を言った。

「ではこの件に関しては、これまで。」

そう言って信志が忠仁と共に、広間を出ようとした時だ。


白蓮が、口を開いた。

「……解せません。」

その冷たい一言に、空気は一変した。

「この件、妃と商人の不義密通の疑いだけでは、ないように思えます。」

「白蓮、何を申すのだ?」

「この疑いの中に、国を脅かす大事が潜んでいるように、思えるのです。」

広間にいる白蓮以外の者全てが、凍り付いた。


「どういう事でしょう。奥様は、何を疑っているのですか?」

信志の代わりに、忠仁が尋ねた。

「……この二人の、関係でございます。」

「二人の関係?何もなかろう。ただの商人と客人だ。」

「それだけでしょうか。」

白蓮は、黄杏と将拓の顔を見つめた。


「王、この二人。面影が似ているようと思いませんか?」
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