宮花物語
勇俊は、将拓の肩に腕を入れ、起き上がらせた。

「逃がしはしません。」

「馬鹿を言うな!怪我をしているんだぞ!見れば分かるだろう!!」

だが部隊長は、刀を降ろさなかった。


その時だ。

立ち上がっていた将拓が、再び膝を着いた。

「護衛長殿……後生です。」

「将拓殿?」

「早く私の目を、潰して下さい。」

それを聞いて部隊長が、笑いだす。

「どうやら護衛長よりも、その商人の方が、助かる道を知っているらしい。」

勇俊は何度も何度も、息を吸ったり吐いたりした。


「お願いです……もう、私の意識が持ちません……」

そして、将拓の体がグラッと、前に倒れそうになった。

「将拓殿!」

それを勇俊が、左手で支えた。

見れば将拓の顔は、青白い。


早く手当てをしなければ、将拓は本当に死んでしまう!


勇俊は、腰に吊るしておいた短剣を、右手で取り出した。

「将拓殿……許してください……」
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