宮花物語
「許すも……何も……私が……あなたに……頼んだ事……です……」

将拓の意識は、半分無くなっていた。

「うわあああああ!」

勇俊は、右手を振り上げると目を瞑り、将拓の左目を目がけて、一気に短剣を振り落とした。


「ぎゃああああ!」

意識を半分失っていた将拓でさえ、左目に走る熱い痛みに、その場にのたうち回った。

「うぅぅぅぅ……」

そして両手で左目を押さえたが、溢れ出した血は、地面を赤く染め上げていく。

「よし、いいだろう。退け!」

それを見た部隊長率いる第8部隊は、サーっと風のように引いて行った。


「将拓殿!」

勇俊は急いで、懐にしまってあった布で、将拓の左目を覆った。

「敵はいなくなりました。早く忠仁様の元へ行きましょう!」

「……かたじけない。」

「何を言うのか!今すぐ治療すれば、左目は回復するかもしれません!」

将拓を肩に抱え、勇俊は一刻も早く、元来た道を戻った。
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