宮花物語
もうすぐで、屋敷への門に着くという頃。

忠仁が、現れた。

「護衛長!どうした?」

「忠仁殿!医者を呼んで下さい!将拓殿が!」

「将拓殿?」

忠仁は勇俊に抱えられている男を見て、愕然とした。

胸は切り裂かれ、左目に巻かれた布は、真っ赤に染まっている。

「将拓殿!なぜこのような事に!!」

忠仁も、将拓に一目置いていた人間の一人だった。


「医者を呼べ!早くだ!」

「はっ!」

門の護衛に命じた忠仁は、急いで将拓の元へ駆け寄った。

「護衛長。将拓殿を抱えてくれ!私は足元を持つ!二人で抱えた方が、早く運べる!」

「はい!」

勇俊は肩から将拓を降ろすと、直ぐに将拓の両脇に自分の腕を入れて、上半身を抱えた。

「黄杏様の屋敷が、一番早い!そこへ運ぼう!」

「はい!」

だが将拓は、忠仁の手を掴んだ。

「黄杏の……元へは……行かないでください。」

「しかし、一刻を争う事態なのに……」
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