宮花物語
忠仁は、紅梅の寝所で横たわっている将拓を、見つめ続けた。
普通なら、死にたくないと、襲わないでくれと、醜い程に頼み込むだろうと言うのに。
その上、疑心暗鬼になった者は、その状況を教えたくれた人まで、隙を見て殺してしまうかもしれないと言うのに。
ただ冷静に……
目の前の、危険を教えてくれた者を信じて……
「将拓殿……あなたと言う人は……」
忠仁の目にも、涙が光った。
「父上……」
紅梅はなぜ、兄のいる黄杏を妃にさせたのか、自分の父親が許せなかった。
例え信寧王と深く愛し合っていると言えど、いや、愛し合っているからこそ、それを理由に撥ね付ければよかったのに。
そうすれば、こんなにも王からの愛情を薄い事に、嘆き悲しむことはなかったのに。
その時、寝所の方から医者が出てきた。
「先生。将拓殿は?」
医者は俯いたままだ。
「命に別状はありません。しかし……左目は、一生見えないままでしょう。」
普通なら、死にたくないと、襲わないでくれと、醜い程に頼み込むだろうと言うのに。
その上、疑心暗鬼になった者は、その状況を教えたくれた人まで、隙を見て殺してしまうかもしれないと言うのに。
ただ冷静に……
目の前の、危険を教えてくれた者を信じて……
「将拓殿……あなたと言う人は……」
忠仁の目にも、涙が光った。
「父上……」
紅梅はなぜ、兄のいる黄杏を妃にさせたのか、自分の父親が許せなかった。
例え信寧王と深く愛し合っていると言えど、いや、愛し合っているからこそ、それを理由に撥ね付ければよかったのに。
そうすれば、こんなにも王からの愛情を薄い事に、嘆き悲しむことはなかったのに。
その時、寝所の方から医者が出てきた。
「先生。将拓殿は?」
医者は俯いたままだ。
「命に別状はありません。しかし……左目は、一生見えないままでしょう。」