宮花物語
忠仁の屋敷では、将拓に女人達が付き、左目の見えない将拓を支えた。

「忠仁様。そこで、お話があるのですが。」

「何であろう。」

「傷も大分癒えた事でございますし、私はそろそろ家に帰らせて頂こうと、思っているのです。」


そう言えば怪我を負っていた将拓が、『傷が治り次第、出て行きます。』と紅梅に言っていたことを、忠仁は思い出した。

忠仁は、腕を組んだ。

「……もう少し、ゆっくりしていかぬか?」

「有難いお話ではありますが、家には妻も子供もおります故。」

そこで忠仁は、将拓に妻子がいる事を知った。

「そうか……黄杏様は、お会いした事があるのか?」

「会うも何も、妻と妹は幼馴染みですから。」

将拓は、少し笑顔を見せた。

「幼馴染み……と言う事は、同じ村の出身か。」

「はい。」

「私は、見た事があるかな?」

「有りますとも。妻は、王のお妃候補筆頭でしたから。」
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