宮花物語
「でも、重い病気ではないとすれば、他に忠仁殿や医師が、訪れる理由がないでしょう。」

「すみません……」

女人の言葉に、胸がざわついた黄杏。


ほんの少し前、紅梅と一緒に、『王の子が欲しい。』と言っていたと言うのに。

先にお子を授かったのは、その紅梅でもなく、自分でもない。

どちらかと言えば、王の足が遠のいていた、黒音だった。


そして、夕方頃。

忠仁を通して信寧王に、黒音懐妊の知らせがもたらされた。

「本当か!忠仁!」

「はい。医師の見立てでは、2か月目に入った辺りだと。」

王である信志は、喜びのあまり跳ねるようにして、立ち上がった。


「おめでとうございます。」

側にいた白蓮が、頭を下げた。

「白蓮。私にも、また運が巡ってきたようだ。」

「ええ。私も、嬉しく思います。」

信志と白蓮は、互いに喜び合った。

「早速、黒音の元へ行かねばな。」
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