宮花物語
「そうですね。忠仁、黒音の具合はどうなの?つわりなどひどくない?」

「今のとことは、順調のようでございます。」

忠仁の答えに、信志は子供のように、黒音の元へ向かった。


黒音の屋敷は、それぞれのお妃の中でも、一番端にある。

黒音の妊娠の第1報を聞きつけた、他の妃達は、先に屋敷の外へ出て、王が来るのを待っていた。


最初にお祝いの言葉を述べたのは、第2夫人の青蘭。

「信寧王様。おめでとうございます。」

「ああ、青蘭。有難う。」

次に待っていたのは、第3夫人の紅梅。

「王、おめでとうございます。」

「紅梅……」

王は一旦歩みを止めると、紅梅を軽く抱き寄せた。

「許せ、紅梅。本来なら、そなたが先にできるはずだった。」

「いいえ。お子が授かるのに、先も後もございません。お気になさいますな。」

実は紅梅が、黄杏から貰った薬草を飲んでいると知ってから、王が毎日のように通っていたのは、紅梅の元だった。
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