宮花物語
白蓮は起き上がって、信志に背中を向けた。


後で聞いた話では、黄杏の流れた子は、男の子だった。

同じ男の子なのに、一方ではお腹の中で動き、一方は大人しい。

これは、どういう事なのか。

赤子の性格のせい?

もしかして、黒音のお腹の子は、女の子?


いや、もっと根本的な原因があるのでは……?

白蓮の根拠のない不安が、頭の中を駆け巡った。


「すまない……あんなに強く求め合った朝に、他の妃の話をして。」

「いいえ。何を仰るんです?あなたのお子の問題は、私の問題でもありますでしょう?」

信志は、ゆっくりと起き上がると、白蓮を思いっきり抱きしめた。

「……今日は仕事を休みにして、一日中あなたと一緒にいようかな。」

頬に手を当て、直ぐ目の前で見つめ合う信志と白蓮。


「どうぞ。でも私は、確かめたい事があるのです。」

「……何を?」

「黒音のお腹の子。本当に順調なのか。」

白蓮は、信志の肩に頭を預けると、窓から遠くに見える、黒音の屋敷をじっと見つめた。
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