宮花物語
今朝まで、自分の腕の中で、寝乱れていた白蓮と、同一人物とは思えない。

「王とて、黒音のお腹の子が、大人しいと仰っていたではないですか。」

「えっ?」

黒音が信志を見上げると、信志は顔を背けたままだった。

「そんな事を、白蓮様に仰っていたのですか?」

一番関係が冷めていると思っていたのに。

黒音は、誰よりも白蓮にそれを漏らされた事が、悔しかった。


「黒音。何かあってからでは遅い。白蓮の言う通り、医師の指示に従おう。」

黒音の胸の中で、妬みの炎が燃え盛る。

昨日、釘を刺したばかりだと言うのに、まだこの女は、自分の邪魔をしてくるのか。

「医師の診察は、私が付き添おう。いいだろう?白蓮。」

白蓮は、静かに目を閉じた。

「ええ、お願いいたします。」


朝、ずっと一緒にいようと言っていたのに、まさか黒音に持っていかれるとは。

白蓮とて、今朝までの甘い一時との差に、戸惑っている一人だった。
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