宮花物語
信志に付き添われ、医師の元へやってきた黒音。

医師は二言三言口にすると、早速黒音の脈と、お腹を触り始めた。

「もう一つだけ、失礼します。」

医師はそう言うと、木筒のような物を出して、黒音のお腹に当てた。


「どうなのだ?お腹の子は?」

信志が待てずに聞くと、医師はゴクンと息を飲んだ。

「信寧王様、黒音様。落ち着いて聞いて下さい。お腹の御子の心音が感じられません。」

「えっ……」

黒音の顔色は、見る見るうちに青白くなっていく。

「それは……」

「心臓が動いていないと言う事です。お腹の御子はもう、亡くなっていると思われます。」

突然の事に、黒音はその場で、大きな声をあげながら泣き始めた。


「どうされました?」

あまりの大きな声に、白蓮と桂花も、診察室に入ってくる。

「黒音様。落ち着いて下さい。」

「これが落ち着いていられますか!」

泣き叫び、近くの物を手に取って投げる黒音に、桂花はただ見ているだけだった。
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