宮花物語
しばらくして、黒音の喪が明け、筆頭女人である桂花が、宮殿を去る日がやってきた。

黄杏は黒音を偲び、桂花の元へやってきた。

「今日で、お別れなのですね。」

「はい。今日まで、お世話になりました。」

桂花は、黄杏に頭を下げた。

「……他の、お妃に仕える事は、できないのですか?」

黄杏がそう尋ねると、桂花は少し考えて、口を開いた。

「黒音様だからこそ、お仕えすると、決めましたから、他のお妃様にお仕えする事は、ないと思います。」

「そうですか……」

黄杏は、桂花の肩をそっと掴んだ。

「達者で……」

「ありがとうございます。」

数秒後、黄杏の手が離れ、桂花に背中を見せた時だ。


「あの……黄杏様!」

桂花が呼び止めた。

「どうしたの?桂花。」

「白蓮様の事で……」

桂花は、少しだけ黄杏に近づいた。

「黄杏様が……また懐妊できるお妃様だと、見据えてご進言申し上げます。」
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