宮花物語
第15章 子を成す意味
ある日。

忠仁から信志へ、一つの報告がなされた。

「おめでとうございます。第3妃・紅梅様、懐妊の兆しがございました。」

「紅梅が……」

信志は公務の途中で、椅子から立ち上がった。


「よかった。いつぐらいに産まれる?」

「来年の春ぐらいかと。」

「そうか。今から春が待ち遠しい。」

信志は、ソワソワと部屋の中を、歩き出した。

「忠仁。そなたも、感慨深いだろう。」

「はい。」

忠仁の目には、薄っすらと涙が、溜まっていた。


そして信志は、ある事を思い出して、ハッとする。

「……今度の子は、無事生まれてきてくれるだろうか。」

その一言に、忠仁も俯く。

「こればかりは、どうにもなりません。運を天に任せるしか……」

「そうだな。」

信志は、気が落ち着いたのか、椅子に座った。


「紅梅には、黄杏や黒音のように、悲しい思いをさせたくないものだ。」

信志は、窓の外から白蓮の屋敷を、見下ろした。
< 379 / 438 >

この作品をシェア

pagetop