宮花物語
だが白蓮の屋敷まで来て、予想外の事が起こった。

「奥様は、王にお会いしたくないそうです。」

「なに?」

信志は、廊下の奥にある、白蓮の部屋を見た。

「私は、白蓮の夫だぞ?妻が死ぬかもしれないと言う時に会えないとは、どういう事か。」

「申し訳ございません。奥様がどうしても、会えないと申しております。」

頭を下げる白蓮付きの女人を横を、信志は黙って通り過ぎた。


「信寧王様!」

「私が勝手に通っただけだ。そなたは、罪に問われぬ。」

そう言うと女人は、追って来なくなり、信志は真っすぐ白蓮の部屋へと入った。

「白蓮。」

暗い部屋の中、寝台の上に、横たわる人影があった。

それが白蓮だと分かると、信志は急いで、その枕元に近づいた。

薄っすらと目を開けている白蓮。

飲み物も口にしていないのか、唇は乾燥していて、ひび割れていた。

「白蓮、私だ。」

話しかけると、白蓮の目がだんだん、開かれていく。
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