宮花物語
「ああ……王よ……」

嬉しそうに微笑む白蓮だが、直ぐに顔を背けてしまった。

「どうした?」

「いえ……今の私は、やつれてしまって、とても王にお見せできるような、顔ではありません。」

そう言って、両手で顔を隠した。

「白蓮?」

信志は、その白蓮の手を、顔をから離した。

「……少し痩せただけで、いつもの美しい白蓮だ。さあ、顔を見せてくれ。」

白蓮はほんの束の間恥ずかしがると、ゆっくり顔を信志の方へ向けた。


白かった肌も少しくすんで、目の下には黒いクマもできている。

頬には張りがなく、口元や目元にも小さなしわができていた。

これがおそらく、年齢相応の顔なのだろう。

夫の為に、王妃と言う立場の為に、白蓮は日々美しくあろうと、努力していたのだ。

「……悪かった。少し言い過ぎた。許してくれ、白蓮。」

「いいえ。黒音が死んだのは、私のせいです。私がもっと……」

「いいんだ。」

信志は、白蓮の顔を見つめた。
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