宮花物語
その日の夜。

紅梅は早速、王である信志に、黄杏の元へ通うように促した。

「黄杏の元へ?」

「はい。今日、黄杏さんとお話させて頂きましたが、とても寂しがっておられましたよ。」

そう言うと、信志はどこか複雑そうな顔をした。

「……そうは言っても、そなたには子が産まれるのだし。」

「それは、王の言い訳ではありませんか?」

紅梅と信志は、しばし見つめ合った。


「言い訳?私が、黄杏を避けているとでも?」

「はい。私に先に子ができました故、黄杏さんに合わせる顔がないのでは?」

信志は、紅梅から目線を反らした。

「やはり、そうなのですね。」

紅梅はここでも、ため息をついた。

紅梅から見ても、二人が思い合っているのは、明々白々。

すれ違っている原因だとすれば、自分しかないのだ。


「黄杏さんは、私に子ができた事など、なんとも思っていませんよ。」

信志は、ちらっと紅梅を見る。
< 395 / 438 >

この作品をシェア

pagetop