宮花物語
次の日の夜。

王の今夜の泊まり先は、黄杏の屋敷だと決まった。

何か月振りに、夫の顔を見るのだろうと、黄杏は考えたが、なぜか心は踊らない。


「ご公務、お疲れ様でございました。」

「ああ。」

信志を屋敷の玄関で迎えても、お互いよそよそしい。

「お酒を、召されますか?」

「そう、だな。」

席についた信志に、酒を勧めても、どこか心ここにあらずと言った雰囲気だ。


「どうぞ。」

久しぶり過ぎて、酒を注ぐ黄杏の手が震える。

「……緊張しているのだね。」

「申し訳ありません。」

ここで話が弾むと思っていたが、黄杏は謝ったきり、一言も話さない。

一体、どうしてしまったと言うのか。


「紅梅から、黄杏が寂しくしていると、聞いたのだが……」

「はい……」

「そうでも、なさそうだね。」

そしてまた重い空気が、信志と黄杏を包む。

「なんだか私達は、すれ違ってしまったようだね。」
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