宮花物語
「ううん。」

黄杏は一度目を閉じた。

「そうね。どちらが先に男の御子を産んでも、恨みっこなしね。」

「そうよ。」

黄杏と紅梅は、手を取りあった。


「どんな名前が、つけられるのかしら。」

「きっと、王と同じような名前が、つけられるわよ。」

二人は一緒に、空を眺めた。

「どちらにしても、王にとっては、初めての御子なのね。」

「そうだわ。やっと王も、お父上になられるのね。」

それが自分の手で叶えられるとなると、紅梅も黄杏も、誇らしく感じられた。

「無事に生まれる事を、願っています。」

黄杏は、紅梅に一礼をした。

「私も。願わくば、皇子が産まれる事を。」

「まあ。紅梅さんったら。」


それから、1か月した後。

紅梅は産気づき、屋敷の中に産婆が駆け付けた。


だが、2日経っても生まれない。

業を煮やした信志は、紅梅の屋敷を訪れた。

「まだ生まれないのか!」
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