宮花物語
そして一方の黄杏のお腹も、大きくなっていた。

「今日は外に出て、散歩でもしようかしら。」

黄杏は、窓から外を眺めた。

太陽の光が眩しいくらいに照っていて、清々しい風も吹いている。

「お体の具合は、大丈夫ですか?」

お付きの女人が、黄杏の体調を気遣う。

ここ最近まで黄杏は、つわりに悩まされていたからだ。

「ええ。今日は体調がいいの。それに、こんな天気がいいのに外に出ないなんて、勿体ないじゃない?」

黄杏はそう言うと、大きなお腹を抱えて、屋敷の外に出た。


思った通り、心地いい風が吹き抜ける。

日差しも思ったよりも、柔らかい。

黄杏は女人と共に、屋敷の周りを歩き始めた。

そこへ、女人を一人連れている白蓮の姿を、見つけた。

いつもは、大勢の共を引き連れていると言うのに。

黄杏はなぜか、白蓮に声を掛けてはいけないような、気がした。


「黄杏様?」

女人に声を掛けられ、ハッと我に返った黄杏は、白蓮に背中を向けた。
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