宮花物語
黄杏は白蓮の腕に、そっと手を添えた。

「いいえ。私の屋敷の庭先でよければ、いつでも花を摘みにいらっしゃって下さい。花もきっと喜びます。」

「有難う、黄杏。あなたは優しい気持ちの持ち主ね。」

黄杏と白蓮は、互いに微笑み合った。

「さあ、そろそろ行こうかしら。」

「奥様。せっかく天気も宜しいのですから、もう少し、ゆっくりされては?」

「ふふふ。そうは言っても、あなたは私がいれば、ゆっくり散歩もできないでしょう?」

白蓮はそう言うと、黄杏の隣を去って行った。


慌てて振り返る黄杏の目に飛び込んできたのは、今、赤子の明梅を抱いて屋敷に戻って来た紅梅を見つめる、白蓮の寂しそうな姿だった。

「白蓮奥様……」

聞かなくても分かる。

白蓮は子供がいる、紅梅が羨ましいのだ。


「今日はなんだか、見られては恥ずかしいところばかり、黄杏に見られてしまうわね。」

「申し訳ありません。」
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