宮花物語
謝った黄杏に、白蓮はそっと手を伸ばす。

「いいのよ、謝らないで。あなたが悪い訳ではないでしょう?」

黄杏は白蓮の気持ちが、痛い程分かるからこそ、頭を上げられなかった。

「それにね、黄杏。私は紅梅に子供が生まれて、どこかほっとしているのよ。」

「白蓮奥様?」

その言葉を聞いて、ようやく顔を上げた黄杏。

「王にはずっと、御子がおられなかったでしょう?姫でも、王が父親になられた事が、とても嬉しくてね。」

白蓮は目の前にいない信志に、想いをはせていた。


きっと信志は、赤子を目に入れても痛くない程、可愛がっている事だろう。

そして父親になったことで、人間的にもこれから成長していくのだろうと。


「黄杏。」

「はい。」

白蓮は、黄杏の手を握りしめた。

「今まで跡継ぎ跡継ぎと、口を酸っぱくして言ってきたけれど、元気に産まれてきてくれれば、皇子でも姫君でも、どちらでもいいのよ。」
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