宮花物語
それを聞いて黄杏は、信志の胸元に、自分を預けた。

「他のお妃方は、違ったのですね。」

「ああ。白蓮は勝手に決められていたし、青蘭は隣の国を攻め滅ぼした時に、忠仁から妃にしてはと勧められたのだ。紅梅は半ば、妃にしてくれと頼まれたと言うのもあるし、黒音は子を作る為と割り切って迎えた。黄杏だけだな。恋しくて、ずっと側に置きたいと思った女は。」

そう言われてしまえば、さっき嫉妬した自分が、なんだか馬鹿らしく思えてきた。

そう、最初から嫉妬する必要など、なかったのだ。


「これで、青蘭の事は見逃してくれるかな。」

黄杏は、目をパチクリとさせた。

「青蘭は、忠仁に勧められたとしても、一目で気に入ってしまったのは、否定できない。それに……」

「それに?」

「女を抱きたいと思うのは、男の性と言うか……」

黄杏は、信志の太ももを抓った。

「痛い!王の太ももを抓るとは!」

「これで許して差し上げます。」

黄杏は、こっそりと舌を出した。
< 417 / 438 >

この作品をシェア

pagetop