宮花物語
「実は、神にお礼を申し上げていたのです。」

「お礼ですか?」

「はい。ここまで無事、お腹の御子が育った事に。そしてもう一度、私に御子を授けて下さった事に。」

黄杏が祭壇に向かって、手を合わせると、白蓮もそれに習うように、手を合わせた。


「もう少しで、産まれるのですね。」

白蓮は、手を合わせながら、呟いた。

「はい。皆さまのお陰で、ここまで順調にきています。」

前回は、黒音の計画で、残念ながらお腹の子は、流れてしまった。

だが、お妃が王の子を産むのを、阻止しようとする輩は、何も他の妃達だけとは、限らない。

いつ、誰に狙われていたとしても、おかしくはないのだ。


「その御子が無事産まれたら、また黄杏に御子を授けて下さい。」

白蓮が発した言葉に、黄杏は目を開けた。

「白蓮奥様……」

「ふふふ。少々、早かったかしら。」

白蓮はまるで、黄杏の子が産まれてくる事を、誰よりも楽しみにしているようだ。
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