宮花物語
まさか寵愛が深い黄杏の口から、そんな言葉が出てくるなんて。

「黄杏。王は決して、そのようには……」

「いいえ。私達妃は、所詮白蓮奥様の、代わりにしか過ぎないのです。」

そんな事を言われて、白蓮は戸惑った。

「王が認める奥様は、白蓮様しかおられないから。だから、誰よりも嫉妬してほしいと、願っておられるのです。それは、愛情の裏返しです。」

「黄杏……」

白蓮の伸ばした手を、黄杏は捕まえた。

「王が愛していらっしゃるのは、白蓮様だけです。本当のお気持ち、本当の信志様の姿を見せているのも、白蓮様だけです。」

それは白蓮に、大切な事を伝えようと必死であると同時に、どこか切なそうで、悲しげな眼をしていた。

「では、白蓮奥様。私は屋敷へ戻ります。」

黄杏は、大きなお腹を抱えて、立ち上がった。


「待って、黄杏。」

白蓮が、そんな黄杏を呼び止めた。

「こんな事、私が言うのもおかしいかもしれませんが……」
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