宮花物語
白蓮は黄杏の手を取ると、じっと見つめた。

「黄杏、皇子を産みなさない。」

「白蓮奥様……」

考えもしない発言に、黄杏は口をあんぐりと開けた。

「あの……」

「あなたが、国母になるのです。」


国母。

それは、時代の王の母親の事。

田舎出身の黄杏には、いささか重荷にも感じた。


「私には、その役目は重く感じます。」

「何も心配する事はありません。」

白蓮は、黄杏の手を強く握った。

「黄杏、私がいます。」

黄杏が顔を上げると、真っすぐで力強い、白蓮の姿があった。

「私だけではなく、青蘭も紅梅もいます。あなた、一人ではない。」

その強さに、黄杏は圧倒されてしまった。


「大丈夫です。あなた一人で、育てる訳ではありません。」

「奥様!」

黄杏も、白蓮の手を強く握った。

「皆、あなたのお腹の御子が、この世に誕生する事を、心待ちにしていますよ。」

黄杏は、白蓮の言葉に、大きく頷いた。
< 422 / 438 >

この作品をシェア

pagetop