宮花物語
朝になり、宴が催される屋敷へ帰った信志は、忠仁を大広間に呼び寄せた。

「如何されました?信寧王。」

「忠仁。私は、新しい妃を決めた。」

すると、忠仁は手を付き、頭を下げた。

「それはそれは、おめでとうございます。で?どこの娘御であらせますか?」

「この屋敷の近くに住む、黄杏と言う娘だ。」

忠仁は、眉をしかめた。

「はて。お妃候補の中に、屋敷の近くに住む娘御など、おりましたかな。」

「忠仁。実は黄杏は、お妃候補の中には、入っておらぬのだ。」

信志と忠仁は、見合わせた。

「もしや、いづぞやの……兄がいると言う娘ですか?」

「ああ、そうだ。」

「そうでしたか……」

頭から反対すると思ったのに、忠仁は冷静だ。


「分かりました。確か屋敷の近くに住んでいると、申されましたな。」

「ああ。」

「早速、親御様にお会いして、明日都に連れて行く手筈を、整えましょう。」
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