宮花物語
「忠仁!」

これで黄杏を、都に連れて帰れる。

信志は嬉しくて、忠仁の手をとった。

「恩にきる、忠仁。」

「いいえ。王の決めた娘御であれば、致し方ありません。」

忠仁は、こんなにも嬉しそうな顔をする信志を、初めて見た。

それが忠仁に、あることを決めさせるきっかけになった。


そして、忠仁は午後になると、言葉通り、黄杏の家を訪ねた。

「どちら様でしょうか。」

顔を見せたのは、黄杏の母だった。

「私は、信寧王の使いである。ここの娘御・黄杏殿の事で、お話がございます。」

「黄杏の事で?」

母は、中にいる父の顔を見た。

父は、王の使いと聞いて、家の中に招き入れた。

無論、黄杏と将拓も呼んで。


「王の使いとは、どのような事でございましょう。」

家の上座に座った忠仁は、黄杏をチラッと見た。

「実は本日、我が国の王である信寧王が、そなたの娘御・黄杏殿を妃に迎えたいと、申された。」
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