宮花物語
「王が?」

何の事やら覚えのない話に、父と母は、首を傾げる。

事情を知っている黄杏と将拓だけが、額に汗をかいていた。

「あの……お言葉ではございますが、黄杏には既に、夫婦の約束をしたお方が……」

「それが信寧王だと、申しているのだ。」

「えっ!?」

父と母は、後ろに控えている黄杏を、振り向いて見た。

黄杏は、ばつが悪そうに、目をつぶって下を向いている。

「だがな、お父上殿。規則で娘御は、王の妃になれぬ。」

「妃になれぬ?あの……信志殿……信寧王様は、何年かかっても、黄杏を妻に迎えられるようにすると、仰って頂きました。」

「ああ、そうなのだ。どうやら信寧王は、黄杏殿を諦めるおつもりは、ないと見える。そこでだ。」

忠仁は、懐からお金が入った袋を、両親の前に置いた。

「1年程、食べていけるだけの金は用意した。これで黄杏殿には、村を出て行ってほしいのだ。」

「えっ?」
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