宮花物語
「よくも、よくも!そんな事が言えたな!忠仁!」

もう一発殴ろうとする信志の手を、父は掴んだ。

「お止め下さい、信寧王。」

「離せ!こ奴は!」

「なりません!王は何時も、家臣に手を挙げてはいけません!」

信志はハッとして、父を見た。

「数々のご無礼を、お許しください。まさかあなた様が、信寧王だと分からずに、婿殿となど……」

信志は、忠仁から手を離した。

「何を申すのだ。忠仁から聞いただろう。正式に黄杏を、私の妃に迎えたいと。」

「身に余る名誉でございます。但し、妻に迎えられない事も、聞きました。」

信志は、忠仁を睨んだ。

拳を強く握ったが、先程黄杏の父に、手を挙げてはいけないと、諭されたばかりだ。

「信寧王。あなたのお気持ちは、本当に嬉しかった。ですが、この国の歴史を、変える事はできません。」

父の言葉を聞いた黄杏は、ガクッと膝から落ちた。
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