宮花物語
それ以上に納得できないのは、信志の方だった。

後ろにあった壁を、何度も叩いた。

「どうしても、ダメなのか。人の気持ちは、歴史を変えられないのか!」

悔しくて、信志は壁伝いに、崩れ落ちた。

「やっと、心を通わせる相手に出会えたと言うのに……諦めるしか、方法はないのか……」

信志の目から、涙が溢れた。


「まだ、諦め下さるな。」

空気を一変させたのは、将拓だった。

「将拓?」

「黄杏を妻に迎えられない理由。それは、兄である私がいる。それだけでしょうか。」

「いかにも。それ以外に、理由はなし!」

忠仁が答えた。

「ならば、私がいなくなれば、良き事。」

将拓は腰から刀を取り出すと、皆の前で、刀を抜いた。

「何をする!将拓!」

その手を止めたのは、誰でもない信志だった。


「早まるんじゃない!」

「信寧王……」

気がつくと、刀を止めている信志の手から、血が流れていた。
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