宮花物語
「王!刀をお離し下さい!」

忠仁が、信志の手を掴んだが、信志は離そうとしない。

「ダメだ。今この手を離したら、私は大事な友人を、失ってしまう……」

しばらく、見つめ合う将拓と信志。

「王。刀をお離し下さい。」

「将拓!」

「あなたは、心から黄杏を愛して下さっている。妃に迎えて頂ければ、黄杏は必ず、男子を産んで差し上げられるでしょう。」

「兄上!」

黄杏は耐えられずに、将拓の腕を掴んだ。

「さすればその男子は、この国を背負って立つ、未来の国王になる。私は地方とは言え、この国に仕える役人の一人。この国の為、友である王の為、何よりも可愛い妹の為、この命を差し出す事に、何の躊躇いがあるのでしょうか。」

その話を聞いていた忠仁が、信志と将拓の間に入り、刀を奪い取った。

「忠仁!」

「ご子息の役人としての心得、見上げたものだ。さすれば、このお金を持ち、死んだ者として消えて頂こう。」
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