宮花物語
その場にいた者皆が、驚きを隠せなかった。

「将拓を……死んだ者として?」

だが将拓は、金を入った袋を掴むと、懐に乱暴に押し入れた。

「父上、母上。いままで世話になりました。」

「兄上!」

頭を下げる将拓に、黄杏がしがみついた。

「黄杏……幸せになってくれ……」

固い決意をした将拓に、黄杏は手を離した。


「まだ、出て行くには早い。」

忠仁が、皆に手招きをした。

「明日の夕方までに、将拓の代わりを用意できるか?」

「代わりで、ございますか?」

「要するに、将拓の身代わりに、火葬する者だ。」

父と母は、顔を合わせた。

「死体なら、金を払えばなんとか……」

「ならば、これで。」

忠仁は、懐から金を出した。


「忠仁。それは……」

さすがの信志も、そこまでやるかと、首を横に振った。

「信寧王!」

忠仁は鋭い目で、王を見た。

「これは、お国の為なのですぞ!」
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