宮花物語
翌日。

将拓は、段取りを教えられた忠仁の家来によって、宴が催される屋敷へと、死体の振りをして、運び込まれた。

「兄上!」

その死体の傷は、本当に死傷を負ったかのように、激しい有り様で、黄杏も生きているのか、疑う程であった。

「兄上!兄上!!」

だがいくら叫んでも、確かめようもない。

呼ばれても、返事をしないように、将拓は言われているのだから。


時間差で呼ばれた、黄杏と将拓の両親も、同じだった。

その傷の激しさに、もしかして本当に殺されたのかと、動揺を隠せなかった。

そして一点だけ、予期せぬ出来事が起こった。

将拓を慕う、美麗だ。


「将拓?」

死んだ振りをした将拓を見て、皆の前で取り乱したのだ。

「いやああああ!将拓!死なないでえええ!」

将拓の体にしがみつき、泣き叫ぶ美麗。

これには、美麗の両親も、彼女の本心を、知る事になった。
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