宮花物語
「そなたの名は?」

「黄杏と申します。」

「美しい人だ。今日は、私の隣で宴を楽しまないか?」

「……はい。」

周りの役人は、新しい女に興味を示した事に、どこか安心をしたようだった。

元より慕い合う、信志と黄杏。

しかも宴の席で、初めて一緒に参加していると言うことで、周りの目も気にせず、二人の世界へと入っていった。


「ああ、忠仁殿。」

家来の一人が、忠仁を引き留めた。

「今回は、滞在の延期はなさそうですね。」

「そうですか?」

「ええ。ご覧あれ。王は新しい娘御に、早速夢中のようですぞ。」

忠仁は宴の席で、仲良く楽しむ信寧王と黄杏の姿に、見入った。

「これはこれは。お目出度い事。」



そしてその日の夜。

お妃にと名前をあげられたのは、当然の如く黄杏の名前であった。

改めて、忠仁から黄杏の両親へ、妃に命じられた事、もう明日には、都に発つ事を告げられた。
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