宮花物語
それを聞いて発狂したのは、美麗だった。

「そんな事、あり得ないわ!」

両親の前で、泣き叫ぶ美麗。

「あの女!裏で王と繋がっていたのよ!」

だが、そんな証拠は、一つも見つかっていない。


「そうじゃなかったら、将拓が殺される訳ないわ!お妃になりたかった黄杏が、人を雇って将拓を殺したのよ!」

好きな人を殺された悲しみと、妃になれず親孝行できなかった悔しさが、今の美麗を支配していた。

「美麗。滅多なことを言うもんじゃないよ。お妃は、黄杏に決まったんだ。それだけの事だよ。」

美麗の気持ちを痛いほど分かっていた両親は、泣き叫ぶ美麗を、なだめるしかなかった。


そして、その日の夜。

美麗は寝所から、黄杏と将拓の家をふと見た。

窓の外から丁度、黄杏の家の勝手口が見えるのだ。

その勝手口から、知らない男が出てきた。

「誰?」

昨日の夜、想い人の将拓が殺されたばかり。

美麗は、息をゴクンと飲み、外へと出た。
< 71 / 438 >

この作品をシェア

pagetop