宮花物語
「将拓!私も、連れて行って!」

走り去ろうとした将拓は、立ち止まった。

それを見た美麗は、歩みより、後ろから将拓を抱き締めた。

「お願い。あなたがいないと、私……幸せにはなれない……」

「美麗……」

振り返った将拓は、美麗を見つめた。

「辛い旅になると思う。それでも、私に付いてきてくれるか?」

「うん……どんなに辛くたって、将拓がいるもの。」

二人は唇を重ねた。

「そうだと決まれば美麗、早く着替えておいで。寝巻きのままでは、旅もできない。」

「ええ。身支度をして、早めに戻ってくるわ。」

そう言った美麗は、足音を立てずに部屋に戻ると、素早く着替え、手短にある物を布にくるんだ。

「このくらいあれば……」

後は、気づかれないように、外へ出るだけだった。


だが部屋を出た時、戸の外には、父が立っていた。

「っ!!」

見つかったと、一歩後ろに下がった。

「行きなさい、美麗。」
< 73 / 438 >

この作品をシェア

pagetop