宮花物語
「父上……」

「お前たちの事、窓から見ていた。死んだと分かって、泣き叫ぶくらい惚れているんだろう?将拓に。」

美麗は、涙を溢しながら、うんと頷いた。

「将拓も、お前に惚れている事は、前々から気づいていた。気づいていながら、知らない振りをしていたんだ。ごめんよ、美麗。」

「いいえ。父上のせいでは、ありません。」

すると奥から、母親の声がした。

「さあ、早く行きなさい。お母さんには、私から話しておくから。」

「はい。」

そして美麗と、父は外に出た。


「美麗。」

「遅くなってごめんなさい。」

駆け寄って来た美麗の後ろに、美麗の父がいる事を、将拓が気づいた。

だが父は、将拓を見るなり、頭を下げた。

「どうか、美麗を宜しく頼む。」

「お父上……」

「さあ、行きなさい。細かい事は、後でそなたの父親に聞くとしよう。」

将拓と美麗は、父に一礼をすると、裏口から村を出て行った。
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