宮花物語
翌朝。

信寧王の一行が、村を出る日がやってきた。

そして、将拓がいなくなった家では、妃に迎えられる黄杏を、綺麗に着飾っていた。

「綺麗だよ、姉上。」

まだ幼い弟が、寂しそうに笑う。

「信寧王の言う事をよく聞いて、最後までお支えするんだよ。」

母は、涙目になりながら、強く強く、黄杏の手を握った。

「……末永く、幸せに。」

父は、それだけを言うと、後は黙っていた。


そこへ、信寧王の一行が、やってきた。

家臣達は、屋敷の近くと聞いていたので、さぞかし大きな家だと思っていたが、意外と小さく、庭もない事に驚いた。

しかし、それよりも驚いたのは、そんな小さな家から出てきた、美しい黄杏の姿だった。

これには、普段の黄杏を見慣れた信志も、ため息を飲むほどだった。

「信寧王?」

「ああ……すまない。とても綺麗で、見間違えたよ。」


こうして国の外れにある、小さな村の娘は、一国の王と恋に落ち、妃となる為都へと旅だって行ったのだった。
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