宮花物語
第4話 王宮入り
国の外れにある多宝村を発って、1週間。

一日中、籠の中にいる黄杏は、この日。

久しぶりに、外へと羽を伸ばした。


「んー!いい気持ち!」

未来の妃の、自由な仕草に、周りの家臣達も、クスクス笑い出す。

それを見た黄杏は、恥ずかしそうに手を下げる。

すると、すぐ近くにいた若い娘が、黄杏に声を掛けた。

「無理もないですよね。一週間ぶりの外ですもの。」

見れば、自分より年下の、可愛らしい娘だった。

「ふふふ。いつも外を歩いているあなた達から見たら、何贅沢を言ってるのって、叱られるけどね。」

「いいえ。私でも、お妃様の立場になれば、同じ事を致します。」

屈託のない笑顔で、笑いかけてきた娘に、黄杏は親しみを覚えた。

「あなたは、何て名前なの?」

「黒音と申します。」

「そう。私は、黄杏。あなたは、王宮で働いているの?」

「はい。王宮で、お妃様方のお世話をしております。」
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