宮花物語
これには、信志も呆れた顔だ。

「黄杏。落馬したら、どうするのだ。」

「落ちないように、王が掴まえていてください。」

「はははっ!」

信志は、笑いが止まらなかった。

「分かった。黄杏には、敵わない。」

そして信志は手を引いて、黄杏を自分の馬の元へ、連れてきた。

「これが、我が馬だ。」

「……綺麗。」

白くて毛並みが整っていて、家臣が乗る馬と比べても、その美しさは別格だった。

「素晴らしい馬だろう。前の国王であった父に、幼い頃に頂いた馬なのだ。」

そう言って信志が手を伸ばすと、馬も信志に顔を寄せた。

「仲がよろしいんですね。」

「そうだな。幼い頃より一緒だからな。」

「そのような馬に、私が乗っても大丈夫なのでしょうか。」

急に怖じ気づく黄杏に、信志は手綱を持った。

「触ってみるか?怖がる事はない。友と思えばよいのだ。」

「友……」

黄杏は、美麗を思い出し、美麗を抱き締めるように、馬に触った。
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