宮花物語
その気持ちが通じたのか、馬も黄杏に、顔を寄せてきた。

「ははは。馬もそなたを、気に入ったようだな。」

そして信志は、黄杏を馬の背に乗せた。

「うわぁ……とても良い景色……」

感動している黄杏の後ろに、今度は信志が乗る。

「気に入ったか?」

「はい。」

そして信志は、黄杏を囲むように、手綱を引いた。


「出発!」

忠仁の一声で、また一行は動き始めた。

「それにしても、君のような女は、初めて見たよ。」

信志は、顔を押さえながら、笑いを堪えている。

「いけませんでしたか?」

「いけなくはないが。馬は人を見るからな。」

黄杏は、チラッと馬を見た。

白馬は、何の抵抗もなく、自分を乗せている。


「この白馬に乗せた方は、他にいらっしゃるんですか?」

「乗せた女は、君しかいない。そうだな、白蓮の事は気に入ったようだが、あの者は馬に乗るのを、嫌がってね。」

黄杏は、“白蓮”と言う名前が、気になった。
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