キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。



学校に到着すると、屋上で待つ隼人くんと合流した。ここに飛ばされてきてから二十一日、登校してすぐ屋上へ行かなかった日はない。



「おはよう、ゆり」

「おはよう」



屋上のコンクリートに腰を下ろして、ふたり並んでお話をしたり、手品を見せてもらったり。
ここ三日で私はひとつの手品を習得した。前に見せてもらった手の中からコインがなくなってしまうという手品だ。


絶対にできないと思っていたのだけれど、隼人くんが「大丈夫、できるよ」と丁寧に教えてくれたので、不器用ながらも出来るようになったのだ。


それでもたまに失敗するし、隼人くんのように美しく披露することはできない。


今日も、他愛もない話をして時間を過ごした。このダラダラとした時間さえ、愛しい。


人生がカウントダウンされている。限られた時間を生きている。それはけして私だけじゃない。私以外の人間もきっとそうなのだ。


ただ私は死ぬとき、亡くなるときがわかっているから気づけているだけかもしれない。
だからこの何気ない時間を大切にしたいと思えるのだろう。


どうして生きている間にそのことに気づけなかったのか。


どうしても生きたい。生きて、好きな人たちと未来に進みたい。
その気持ちが膨らんだ今、自殺する前の自分に言いたいことは山ほどある。


どうにかして、いじめから逃げて。死なないで。戦わなくていい。立ち止まってもいい。他の人の人生と比べなくていい。


生きてさえいれば、道は開けるのかもしれないから。


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