キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


私には隼人くんの未来がそう見えた。彼の未来は開けている。どこまでも末広がりで、苦難困難があっても、たとえ立ち止まっても、いずれは立ち上がり、立ちはだかった壁を壊して先へ進んでいく。


そのように感じた。
けれど、例外は隼人くんでも私でもなかった。
死ななければ私の未来だって、彼と同じだった。


そのことに気づけたのは飛び降りたあと。人生を捨てて、自分を捨てて、未来も捨てた。
両親への気持ちも、未練も自分の心から切り離して、飛び降りたあと。


あと一ヶ月しかない命。ここで色々なものに気づくなんて、やはり遅すぎる運命はあまりに残酷だ。


でも飛び降りる前の私に、世界の広さは見えなかった。未来に広がっている、無数の可能性になんて到底気づけなかった。


私は、なにもかもが遅すぎたんだ。


青い空、白い雲、山の緑、川のせせらぎ。
大切な人の笑顔、言葉、仕草、声。


今はある幸せは、死ぬ前の私にも訪れたかもしれないものだ。


死んでしまえば、ゼロになるけれど、生きていたらわからなかった。


そのまま不幸だったかもしれないけれど、幸せになれた可能性だって捨てきれないのだ。



***



昼休みになって、私と隼人くんはまた屋上に来た。広げたお弁当に隼人くんが頬を綻ばせる。



「わぁ、すごい!美味しそう!」

「作ったの初めてだから、味の保証はできないけど……」

「ありがとう。いただきます!」



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