キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
無意識に人を傷つけている人がいる。
理香子ちゃんのように常に正しさのなかで生きていける人なんて、なかなかいないのかもしれない。
時に鋭い指摘や注意は、人の反骨心を煽ってしまうのかもしれない。それが、わからないわけではない。
車通りの少ない横断歩道で、赤信号を守らない人がいたとして。
そこに「急いでいた」「事故が起きなかったから平気」とか、そういった言い訳があったとしても、悪いのは信号を無視した人であるのは間違いがない。
世の中には、守らなければならないルールがたくさんある。
いじめはそのルールの仲間には入れないのだろうか。
道徳のようなアバウトな倫理じゃなくて。もっと具体的に。例えば、犯罪になるとか。
ルールになれたとしても、赤信号と同じで守らない人も出てくるのかな。
いじめは、どうやったって、なくならない存在なのかな。
どうしてかな。
誰も救われないのに。
いじめていた人も、きっと、いつか、世界で一番、自分よりも大切な人ができる。
そのとき、胸を張って生きていけるのかな?いじめていた過去は消せないのに。
大好きな人に、笑って学生時代を話せるのかな?
私をいじめていた坂本さん。理香子ちゃんをいじめていた美樹ちゃん。一緒に面白がっていじめてきたクラスメイトや、見て見ぬ振りをしていた周りのクラスメイトたち。
ニュースになっていた自殺した若い人を、傷つけた人たち。
自分たちだけ、笑顔の未来に向かっていくの?
***
とうとう背中の文字は一になった。
明日、私はこの世界から消える。
そして季節は秋になろうとしていた。
昼間は温かいのに、夜になると風が冷たくなり、鈴虫がうるさいほど鳴きだすのだ。
山の緑はじょじょに赤や茶に変色しつつある。