キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


無意識に人を傷つけている人がいる。


理香子ちゃんのように常に正しさのなかで生きていける人なんて、なかなかいないのかもしれない。
時に鋭い指摘や注意は、人の反骨心を煽ってしまうのかもしれない。それが、わからないわけではない。


車通りの少ない横断歩道で、赤信号を守らない人がいたとして。


そこに「急いでいた」「事故が起きなかったから平気」とか、そういった言い訳があったとしても、悪いのは信号を無視した人であるのは間違いがない。


世の中には、守らなければならないルールがたくさんある。


いじめはそのルールの仲間には入れないのだろうか。


道徳のようなアバウトな倫理じゃなくて。もっと具体的に。例えば、犯罪になるとか。


ルールになれたとしても、赤信号と同じで守らない人も出てくるのかな。


いじめは、どうやったって、なくならない存在なのかな。


どうしてかな。
誰も救われないのに。


いじめていた人も、きっと、いつか、世界で一番、自分よりも大切な人ができる。
そのとき、胸を張って生きていけるのかな?いじめていた過去は消せないのに。


大好きな人に、笑って学生時代を話せるのかな?


私をいじめていた坂本さん。理香子ちゃんをいじめていた美樹ちゃん。一緒に面白がっていじめてきたクラスメイトや、見て見ぬ振りをしていた周りのクラスメイトたち。


ニュースになっていた自殺した若い人を、傷つけた人たち。


自分たちだけ、笑顔の未来に向かっていくの?



***



とうとう背中の文字は一になった。
明日、私はこの世界から消える。
そして季節は秋になろうとしていた。


昼間は温かいのに、夜になると風が冷たくなり、鈴虫がうるさいほど鳴きだすのだ。


山の緑はじょじょに赤や茶に変色しつつある。


< 109 / 145 >

この作品をシェア

pagetop