キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。



ああ、この前屋上で話したことを理香子ちゃんにも話したのか。



「明日のマジックショーは任せて。ゆりちゃんのぶんも頑張るから」

「ううん、私は、行かないよ」

「どうして?」

「……やらなきゃいけないことがあるの」



言葉を大切に置くように、言う。



「それは、自分よりも大切なことなの?」

「うん、そうだよ」



自分よりも、自分の命よりも、大切なものがある。守りたいものがあるの。

それは、私に「生きたい」と思わせてくれた人の「命」、「未来」、「夢」、「笑顔」。


それに、私は一度、自分を殺したんだもの。

簡単に生き返っていいわけがない。

命は、重い。こんな私でも、隼人くんや理香子ちゃんと同じように、重い。


そのことに気づいたのは、死んだあとでした。気づかせてくれたのは、ひとりの男の子だった。


私にも未来があった。無限に広がっていたはずなのに、見えなくなっていた。学校でのいじめという、狭い世界のなかで、広い世界を見失っていた。


生きてやればよかった。どんなに苦しくて、悔しい思いをしても。死にたくなっても。無理して「生きたい」ってポジティブにならなくても、よかったんだ。


ただ生きていれば、よかった。


泣きながら。心を傷つけながら。自分の運命を、人を恨みながら。見えない未来を、先のことを、終わることのない地獄の日々を睨みながらでも。


立ち止まって、歩みを止めてもよかったのだ。


そしたら、いつか、いつか、「生きてみよう」って思えたのかもしれない。


今の私のように。



「私、ゆりちゃんには死んでほしくないよ……」

「ごめん……」



私も、生きたい。生きて、ふたりに出会いたい。次は、本当の自分の姿で。


だけどね?
不思議なこともあるんだよ。
私たち、死ななければ出会えなかったのだから。


神様。私のことが嫌いな神様。


時間が戻ったあと、私がこの世界から消えたあと。
また、人間として世界に生まれてきても、いいですか?それは、許してくれますか?


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