キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
そうして流れていた空気を「ダメだよ。そんなこと言っちゃ」と、理香子がぶち壊す。流れ去ろうとしていた悪い雰囲気が、その瞬間凍りつく。
私に恥をかかせようとしているのかと最初は勘ぐっていたが、理香子はたぶん違う。真面目で真っ直ぐな性格がそうさせているのだろう。
悪いのは私だ。だけれど指摘せずに流してほしいと常々思っていた。けれど、私が悪いぶん、そのことは理香子本人には伝えられなかった。
初めてこんな風にはっきりと間違いを指摘してくる子に、出会ってよかったと思い込もうとしていたときもあった。
けれどそうして見て見ぬ振りする不満は溜まりに溜まって、我慢ができなくなっていた。
周りの同級生たちは、どうやって自分の気持ちと向き合って生きているのだろう。
イライラしないのかな。怒りたくて、でもぶつけるところがなくて悶々としたりしないのかな。
先生や両親に怒られて、言い返したくなったりしないのかな。
「うざい」
「わかってるって!」
「今、やろうと思ってた」
「やる気失せたわ」
「黙ってて」
反抗期という言葉で片付けられるのも癪だった。
解決方法が自分で見つけられない。
心に蓄積されていくモヤモヤとイライラをなくす方法がわからない。
周りに当たって、自分の気持ちをストレートに放出して発散するほか無かった。
それでも足りないぐらいだったのだから。
そして、ついに解決方法がわかった。
連日無視し続けていた理香子の制服を掃除ロッカーに隠した日、それが発覚した。
──自分以外の誰かが辛い思いをすれば、いいんだ。
誰かが自分より不幸な姿を見ていたら、ほっと落ち着くのに気がついた。
理香子が机の上にあったはずの制服をひとりでに探し出したとき、変な高揚感があった。
周りの人に「私の制服知らない?」と聞いているのを見て、クスクス笑いたくて仕方なかった。